当社では環境DNA技術を用いて、ウシモツゴ(絶滅危惧IA類〔CR〕*)の生息状況をモニタリングする手法を開発しました。当社屋上ビオトープには、中部大学第一高等学校科学部が自然保護活動の一環として放流したウシモツゴが生息しており、今後はその定着・繁殖状況の確認に当該技術を活用してゆく見込みです。

ウシモツゴ

ウシモツゴ

愛知県、岐阜県、三重県のごく限られた場所に生息している「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの(絶滅危惧ⅠA類〔CR〕*)」として、環境省レッドリストに掲載されています。

技術概要

環境DNAとは、水、土壌、空気などに含まれる極微量のDNAの総称です。環境DNAは通常、そこに生息する生物に由来する(生体から溶け出すもしくは放出される)といわれており、当該技術ではそのDNA配列を特定することで、生物の在不在や生息量を判定することができます。

ウシモツゴ(最上段)とその近縁種の遺伝子配列

ハイライト部分(緑色)は当社が決定した解析対象領域。なお、この領域はウシモツゴ以外の生物と区別できるよう、特異性の高い配列が選択されています。なお、網掛け文字(グレー)はウシモツゴとの相違配列を示します。

測定方法

当社ビオトープの環境水(約500mL)から採取された環境DNAは、PCRと呼ばれる技術で数億本にまで増幅されます。この時、ウシモツゴの解析対象領域(上図、ハイライト部分)のDNAが増幅されると反応液が蛍光を発するよう、あらかじめカラクリを仕込んでおきます(リアルタイムPCR/Taqman法)。これにより、以下のような評価を行うことが可能になります。

  • 蛍光が強い = 標的生物の生息量が多い
  • 蛍光が弱い = 標的生物の生息量が少ない
  • 蛍光がない = 標的生物は生存しない

本手法によるメリット

本手法では調査に伴う生物の捕獲や目視確認を必要としません。すなわち、迅速・簡便・安価に調査を行えるだけでなく、調査による環境への人為影響も最小限に抑えることができます。